「週刊粧業新聞」掲載で思うこと:化粧品メーカーのサスティナブルやSDGsについて

化粧品業界にも数年前からサスティナブル対応についてメーカーの考え方や行動をチェックされる機会が増えてきました。最近では特にSDGsの観点からどうか?などとテーマに沿ってインタビューや寄稿文を掲載することが多くなってきています。

私はこの流れに対して、あたかも取ってつけたような、その時代のキーワードだから・・・という観点で行動や商品開発、コンセプトを「後付け」する流れを注意深く見ています。

つまり、その時に合わせたマーケティングに寄ったこの様な行動や考え方は、成熟した消費者にはいずれ見抜かれる時が来るからです。

この流れ、キーワード(サスティナブルやSDGsなど)合戦こそが化粧品業界がよく陥りやすい「本質から離れた議論」になり結局、「浅い商品、思慮に欠けた商品」に成り下がって単なる広告キーワードに踊らされた商品になっていくことが多いと感じています。
(だからと言ってそれが売れない、というわけではないのですが・・・。)

私の会社はよく、「SDGS的な活動をされてますね!」と言われます。
でも私はいつも「自然な流れでたまたまSDGsのような活動になってるだけです」と答えます。

おそらく、この様なケースが本質であり、多くのSDGs活動に貢献されている企業もそうであると思っています。

でも日本の、特に化粧品業界のマーケティングの中では、今でも多くの「キーワード合戦」が続いているのが現状で、だから「SDGs的な・・・」みたいな言葉が出てくるのかなと思います。

一番それを思うことが、数年前にいわゆるブーム的になった「オーガニック化粧品」です。

日本のバイヤーはこぞって「オーガニック認証が取れていますか?」などと、あたかも認証がメインで本質はその後、という風潮が今でも続いています。

ヨーロッパの認証機関のECOTHERTやBIOなど、元来は農法から確立され、その土地に合った形で醸成されてきたオーガニック文化を一つの指針で判定する認証機関なので、当然、これまでの知見や歴史がその判断基準になっていると思います。そのため、それら本来の哲学に関しては崇高なものがあり、この様な団体の成果として世界中にオーガニックコスメが広がってきているのも事実です。

しかしこれはあくまでもヨーロッパやアメリカなど、海外で生まれた認証機関と認証方法であり、日本国内の化粧品に基準を合わす意味が私には理解できません。

つまり、認証のためのモノづくりが基本で認証基準もヨーロッパのそれと似たような形にして、何が本質なのか?と常日頃懐疑的に見ています。

いやいや、日本には有機JAS認証があるではないか!と言われますが、本当に日本の有機JAS認証とエコサート等と同じような基準が、化粧品を仕入れる動機になるのでしょうか???
結局最後は、魚屋さんで大根を売るような意味がわからない議論になっているとは思いませんか?

私は化粧品業界に入って今年で24年目になります。
化粧品業界は2000年の薬事法大幅改正のときから明るみに出た「色々とやばい成分」をカモフラージュするためのマーケティングやキーワード探しに躍起になっているような感じにどうしても見えるんです。

20世紀から21世紀にかけて「粧原基」「粧配基」が事実上なくなり、全てメーカー責任でモノづくりを行っていく中で、メーカーとして守られていた時代から守っていかなくてはいけない時代になりました。
それであるからこそ、お肌に使う原料に対してもっと「誠実に」取り扱うべきであり、トレーサビリティー等にも注意を払う時代になってきていると思っています。

キーワードやトレンドワードだけで化粧品を作るのではなく、一番の本質であるお客様のお肌のことを考えたモノづくりこそが大事であることは、どのメーカーも本質的にはわかっていると思うのです。

でも、お客様が残念ながらまだまだ未成熟な部分もあり、お客様の目が開かないうちに売ってしまえ!的な流れも事実あると思います。

まだ目の見えないお客様に光を与え、お客様ひとりひとりの肌質の違いがあるように良い評価も悪い評価も受け入れて、メーカーとしてとても当たり前のことですが、「謙虚」に「誠実」に、モノづくりを精進し続けたいと思っています。